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その日、私は念入りに果物ナイフを磨いでいた。
砥石に果物ナイフを押し付けて前後に移動させる私の心臓は、まるで早鐘のように鳴っている。
こんなにドキドキしたのは久しぶり…………。
明日のことを考えると、緊張してしまって仕方がない。
胸が張り裂けそうだった。
それなのに桶に入っている水に移る私の顔はどういう訳か微笑んでいた。
何故笑っているのかな……。
それは明日が特別な日だから。
いいえ、明日が特別な日に‘なる’から。
明日、私の好きな男の子を、遂に私だけのにできるから。
「やっとだよ。やっと、君を私だけのものにできる日が来るんだよ……。
信君……」
あぁ、君のことを考えると、頭がおかしくなっちゃいそうだよ。
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