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白髪になって、沢山の皺が顔に刻まれた。 皺の一つ一つに、思い出がある。 孫が生まれ自らの名前を与えた。 そのくらい充実した人生を送ってきたと駿は思っていた。 ある晴れた春の日、駿は散歩をしていた。 もう十分ではないか、そろそろ会いに行こうかと。 本当にそんなことばかり考えていたら、駿は公園の桜の近くに立っていた。 60年経っても、桜は変わらず咲き誇り、花びらは舞い散る。 ゆっくり、足取りは確かに、一歩を踏みしめるように、桜へと近寄っていった。 よくここで寝転んでりつと昼下がりを過ごした昔の記憶が甦る。 もう、遠い昔のようだ、しかし、ごく最近のようにも感じる。 あと、桜まで数歩の距離まで近づいたとき、眩しい光が駿の視覚を奪った。 「ありがとう、駿は私の分まで幸せになってくれたね」 何も見えない光の中で彼女の声だけが駿の耳に届く。 駿は無言で頷く。 「この前ね、駿の孫に会ったわ。話して名前を聞いたら貴方を感じられた」 駿の目に彼女の姿は映らない。 「とても、幸せになってくれたのね」 駿の手を誰かが繋いでくれた。 とても温かい、体温を感じられる手のひら。 「もう、俺はいっても良いかな?」 駿の言葉に頷いた気がした。 そして―― 光が弱まり駿の視覚が戻った時、隣にいたのは笑顔の彼女だった。 「もう、絶対に離さないからな」 ~fin~
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