お盆のある日

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さあて、どうしたもんか。 みえと遊びにでも行こうなどと考えていた私は愕然とする。 お盆は皆、家族で過ごすものなのだ。 その時、私を呼ぶ母の声が聞こえた。 「ちー!ちひろー?何してるのー? お仏壇にお線香はあげたのー?」 「まだだよー!!!」 …パタパタパタ。 母の声が聞こえた仏壇のある畳の和室へ向かう。 「あれ?…おかぁさぁん…?」 …誰も、居ない。 その時、開け放していたはずの障子がするするする…と音をたてて、閉まった。 ………? 少し薄暗い部屋。 母の悪戯だろうか? 斜め前にはお仏壇。 立派なお仏壇。 …お線香あげてみようかな…? 私はスッ…と、まるでどこかの厳正な儀式のように、お線香を掴む。 蝋燭に火が灯っていた。 ゆらゆら揺れる炎は、なぜか少しだけ大きくなった気がして、 私はそこに、お線香を近付けた。 …………。 見開いた私の目。 …お盆になると必ずといっていい程じいちゃんから言われてた。 「…ちぃ、約束だよ。送り盆の日が過ぎるまでは絶対に仏壇に線香をあげちゃいかん。」
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