プロローグ

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 ――桜咲く季節。    春の風が頬をくすぐって吹き抜けていき、緑の匂いを鼻の奥に残していく。  家の事情で久しぶりに生まれ故郷である光星町(こうせいちょう)に帰ってきたんだけど……。 「……うわあ」  かなり間抜けな声が自然と漏れてしまった。  記憶とはかなり掛け離れた姿へと変わっていた町。  駅前の古びた店が並ぶ懐かしい商店街。その一角が最近テレビなどで見掛ける大きなショッピングモールに姿を変えていた。  子供の頃、友達と遊んだ思い出のおもちゃ屋さんは綺麗にその姿をなくし、なんだか別の町に来たみたいな気がする。  他にも目に飛び込んでくる町並みは昔の記憶とだいぶ違い、その様相を大きく変えて……そして人も変わっていた。
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