プロローグ

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「あの……その、ですね。ひ、人を待っているから……す、すいませんっ」  やんわりと丁重に、それでいてきっぱりと断る。  これがナンパを撃退する時の極意だと、お姉ちゃんに教えてもらったけど―― 「いいじゃん! そんな奴、ほっといてさっ」  まったく話を聞く耳持ってない上に、更に身体をくっ付けてきて気持ち悪い。  ……全然、効果ないじゃん!  お姉ちゃんも、かなりいい加減な事を教えてくれたものだよ。 「えっと、その」  男の子は、やる気満々で――何をやる気なのかは、あまり聞かないで――迫ってくる。  その表情を一言で表すなら――狼。  それも三日間ぐらい食べてなく、目が血走った餓えた狼。この例えだと……かなりピンチ? 「コラッ! アンタ、またナンパなんかしてっ!」 「ひゃうっ」  突然聞こえてきた怒鳴り声に驚いて振り返ると、ドカドカとこちらに歩み寄って来る人影。  逆光で顔がよく見えないけど、とても怖いオーラを放ってます。
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