吉田家事情

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私の人生は、名前が悪かったのかも知れない。 お雛さまの様に、気品高く美しくあれ…… と、願いを込めた母さんの命名だったけど…… 本当に今となっては、この名前に憎しみを抱くようになった。 母さんは父さんの2号、古い言い方をすれば、私は妾の子供だった。 認知さえ許されなかった、法律上では父無し子。 平日、父さんが家に帰って来ることはなかった。 仕事で忙しいんだよ……とか、 出張に行ってるから……とか、 誤魔化され、だまされながら過ごしてきた幼女時代。 週末には、たくさんの紙袋を抱えた父さんが、出張先から帰って来る。 ドアを開けた瞬間に、優しい顔をした父さんが、そこに立っていた。 一目散に走って行った私を、父さんは抱き上げ、その場でくるくる廻す。      目が回った。 気分が悪くなるくらい、私は父さんという乗り物に酔った。 紙袋の中には、たくさんの食料品が入っていて、母子二人、一週間では食べきれないくらいの量を、母さんは冷蔵庫に詰めていた。 まだ先週の分も残っていると言うのに…… そうゆう訳で、吉田家の冷蔵庫は、いつだって満腹状態。 母さんの好きだった地酒とカニ缶は、毎回必ず欠かされる事はなかった。   
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