はじまり

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  「堕ろしてくれ……」 優しいテノールが、苦々しくどんよりと届いた。 耳を疑う、言葉。 その瞬間に、私の世界は色もかたちも失った。 ──それが、"闇"の始まり。 ……どうして、切れなかったんだろう…… 馬鹿な、私…… かわいそうな、あのこたち── 彼とは合コンで知り合った。 お互いに大人だし酒も入った上のこと。 「加賀亜沙美さんかぁ、じゃあ亜沙美ちゃんで」 「堀依裕也さんですか、……裕也さん、でいいですかね」 初対面から下の名前で呼び合い、気付けばいつの間にかさり気なく消えている部類だった。
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