試作品。Ⅱ

はじまり

正直、私に彼は"過ぎた人"だった。
オツムの程度は普通よりちょっと下？のしがないOLで、顔だって十人並み。
誇れる資格も、コレといった取り柄も特にない私に比べ、部長を務めるエリート。

32とは思えない、そうねぇ……草なぎ剛似の容姿とか、立ち居振る舞いが実に紳士的とか。
何よりも、照れたように笑うところが。あの笑顔は反則。
絶対女性が放っとかないタイプよ、断言する！

実際、会場でも争奪戦は静かながらも笑っちゃうくらい壮絶だったもの。
有り得ないわよねぇ。
だから声を掛けてくれた彼に、有頂天になってはしゃいで、のめり込んだ。

もう27で、お局にもそろそろリーチだし、多分このまま──

……そう、思っていたのに。

今日は久々に外で待ち合わせをすると聞いて。
期待に胸膨らませてめいっぱいお洒落して、ここへ来た。