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「――――」
喉を震わせたものが自身の吐息なのか、彷徨か、己を焼く灼熱か、溢れるほどに高ぶった血潮か。
体中から溢れる血液。
体中に浴びた血液。
この戦争に身を投じたことに後悔はない。
あるのは待ち受ける己と世界の終焉のみ。
この戦いの引き金となった父は、父の敵と共に互いを討った。
冥界へと落とされた妹は、この戦いに何かを探し求め、彷徨っている。
果てなき海へと捨てられた弟は、無惨にも潰し殺され、自らに溜まった毒を撒き散らした。
そして俺は、
「最後に何か言い残すことはあるか――大罪を犯す者よ」
たった今、殺される――否、殺されたと言ってもいい。
死ぬのは時間の問題なのだから。
だから、どうせ死ぬのなら、最期は派手に――歴史に残るような“化け物”であろう。
罪人なんて過ちを犯したものなんかではなく、
後世まで語られるような、偉大な、――最高神を殺した化け物として。
「ずっと、ずっと焦がれた割には……あのジジイ、不味かったなぁ……」
「――この、化け物め……!」
その言葉に笑いさえ漏れる。
ああ、そうだ。
それでいい。
その目が、俺を軽蔑し、見下し、そして俺を心の底から怯えて隠し切れないその様が―――
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