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「よーちゃん、朝は断然トーストだと言ったでしょう!?」と妹。
「あかんねや。へーちゃん、パパやんがよーちゃんに朝はご飯がええゆーたからこうなったんや!」と親父。
「……パンでも米でもなく、朝からシリアルだけどな」
朝からテンション高い妹と親父にいちおうツッコミを入れて、コーヒーを一口。めちゃくちゃ熱い。
「ごめんね。おかーさんが甘いのが食べたいって勝手に全員分お皿に盛っちゃったから……」と、弟。
別に朝から全部やらせてしまっているのだから文句こそつけても、何もしないでただ座っているだけのあの二人に何か言われるような筋合いなどないように思える。
しかし本人もそこまで気にしていないのか。口だけは申し訳なさそうに言いながらも、弟は朝食の準備に忙しく動いたまま止まらない。
しかしてそんな中、よくよく考えてみると事の中心で二人から真っ先に怒られるべき人物はうろんな空気を垂れ流しながら堂々と言った。
「朝は糖分が必要なのよ」
やんわりと微笑みながらそう言われてしまって、親父も妹もそれ以上なにも言えなくなってしまう。
毒気を抜くにしても、そこに何の謀も悪意もないとここまで効果があるものかと素直に感心さえ覚えてしまう。真似をしたいとは絶対に思えないけれども。
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