SUB-MOA

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 広い敷地に建つそれは一般居住区指折りのガンショップ、「榊銃砲」。  店内の広々としたフロアには世界各国のメーカーの銃がまず並び、等間隔で並ぶ棚には様々なアムニッション、周辺機器、用品が整頓されている。  圭司はそれらに目をくれず、ハンドガンが陳列されたガラスのカウンターの裏に佇む初老の大男に声をかけた。  「オッチャン、取りに来たぜ。早く見せてくれよ」  やや高めの、濁りの無い声でそう告げると、カウンターの大男――榊銃砲店主、榊 十三(さかき じゅうぞう)――が唸る様に答える。  「焦るんじゃねェよ。オイ、工房の俺の机の上にあるヤツを取ってきてくれ」  同じくカウンターの後ろに立つ若い従業員にそう指示を出すと後ろにあるドアを開けて入って行き、丁度一分程で大きなハードケースを持って戻って来た。  それを十三に渡すと元の位置に戻り、再び他の客の応対に回る。ケースを受け取った十三はカウンターの上、圭司の目の前にそれを置き、開いてみせる。  耐衝撃性を有する立派なケースに鎮座していたのは、M1A系のショート・ライフル。  スプリングフィールド SOCOMⅡをベースに圭司が――優秀なガンスミスの側面を持つ――十三に依頼したカスタム・モデルである。  オリジナルのブラック・ファイバー・ストックはエルゴノミクスなデザインの新鋭ストック、JAE-100 G2 PRSに変更され、オーナーである圭司のリクエストによりトーンを設けずカラーはSWATブラックに統一された。  外観的にはレシーバーはそのまま。そしてSOCOMⅡの特徴であるエクステンデッド・クラスター・レールはロアを外し、アッパーを流用。  アンダー・レールはJAE-100ストックの物を使用し、タクティカル・アクセサリーに対する拡張性を有している。
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