SUB-MOA

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 既にアンダーレールにはタンゴダウン製のフレキシブルでスマートなバイポッドが装着され、トップにはラバーカバーとフリップアップ・キャップを纏いNVにも対応するエイムポイント M3がこぢんまりと取り付く。  そのすぐ後ろには無倍のダット・サイトの倍率を三倍にブーストする同社のマグニファイアーが、スイングして簡単に取り外せるマウントに載って控えている。  十三が展示する様にバイポッドを開き自立させたそれに惹かれる様に圭司が手に取り、スタンディングで構える。  おもむろにコッキング・ハンドルを引きつけハンマーをコック。マガジンが着いていない為、そのままフリーに平たいボルトが前進し、空のチャンバーを閉鎖する。  スイッチの入っていないオプティクスの虚空を覗きながら引き絞られたツー・ステージのトリガーは、マッチ仕様のそれに勝る素直さでハンマーをリリースし、乾いた金属音を響かせた。  内面における十三の仕事であるが、それはこれだけに止まらず、そして何よりの物が“榊”の刻印が入ったヘビーなカスタム・バレル。  長いライフル・バレルを加工出来る放電加工機によって作り出される特注品であり、尚且つそれが十三の趣味の一環、道楽の産物であるが故、高品質ながら世間には知られないレア物である。  指定のマッチ・アモから逆算されたライフリング・ピッチ、チャンバー・カッティングを施され、マズルブレーキを備えた16インチのショート・バレルながら100ヤードで1MOAを切るアキュラシーを誇る。  スポーツ、タクティカルの両面における満足をオーナーに与える究極のCQBライフルが今、圭司の手の中にあった。
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