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到着と同時に、くれはとかずはの専属メイドである秋斗(あきと)が出迎えてくれた。
「ただいま~」
「今、戻りました…」
折り目正しく一礼をし、二人を迎える秋斗の様子が、いつもと少し違うことに二人が気づく。いつもとは違い、のんびりとした空気でない。
「何かあった?」
小首を傾げて不思議そうに聞くかずは。もしかしてと思うくれはは秋斗に問いかける。父親が忙しい中、時間を割いて娘二人に話をしたいのに。肝心の娘が二人とも屋敷に居ないことで、八当たりをされたのではないかと思ったのだ。
「父上でしょうか…?」
「……気にしちゃダメ」
「え?」
「…大旦那さまのこと、気にしちゃダメですよ…」
離れに暮らす祖父を大旦那と呼ぶ、話は父親からだと思っていたくれはも、一瞬上を見て額を押さえた。
「それは父上が……急かすはずですね…あははは…はぁ」
空笑いが、そのままため息に変わる。二人の祖父であるこの屋敷の主は、父親さえも頭に上がらない。それは王族の血をその身に宿しているプライドやらもあるのだと思うが、とにかく気難しく厳格を若干通り過ぎた頑固じじいというのが孫娘二人の共通の意見であった。
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