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四季の流れが緩やかなことで、人口も多く一見穏やかな魔法の大国――ジャッポン。その国の要であり、ギルドなどの数も多くある聖都、響(ひびき)。
魔法大国の中でも一番に名前が挙げられる響には、色々な種が多彩に営みを持っていた。
明るい日差しの裏に、蠢く影もない訳ではないが、それでも日々は穏やかに流れている。今日も今日とていつもと変わらない日常は、そこにあった。
「いやぁ…!また居ないのですかぁ…っ!」
がっくりと長い裾がベルベットの上に広がる。青銀の髪に明るい茶色の瞳。少し間のびした声が響いたのは、ディアマンテ家の広すぎる廊下。
項垂れて半分ぐらい涙を浮かべているのは、当家の長女であるクレミリア・ディアマンテ。通称をくれはといい、今年の実りの季節には25歳になろうとしている。
「どうして、大切なお話の時にあの子は居ないのですかぁーーっ!」
すでに泣いていた。同じ格好のまま、微動だにせずにベルベットの敷布を見つめていた。
それも毎日のことである。いつになればなれるのか、それはきっと一生無理と思っても心にしまおう。
あの子というのは、当家の次女であるカジュリア・ディアマンテのことである。通称はかずは。![image=231602090.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/231602090.jpg?width=800&format=jpg)
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