第一話、暗雲せまる

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「無事、再会おめでとう…」 「ありがとうございますぅ! 今度また酒場で、おいしいお酒奢りますですよ」  満面の笑みを浮かべて言うくれはは、見た目のおっとりとした風貌とは違い酒豪である。ゆづは姉妹クラッシュにあった商売道具である机と椅子と起こす。 「あ、ゆづさん…ごめんなさいっ!」 「私たちも手伝います」  机も椅子も無事ではあったが、よほど痛いのか打ちつけた部分を撫でている。軽く治癒の魔法を施しているのかと思ってみていたが、ただ単に痛みをこらえているように見えた。  きちんと元に戻すと、二人はゆづに一礼して踵を返す。くれはの腕にしがみついて、歩くかずはを不意にゆづが呼び止めた。 「かずはちゃん…運命の歯車が廻るよ…今日中に」  それは普段の妖艶さなどない、素の表情であろう。凛とした静の気が満ちている。きょとんとするかずはとくれはに、何かを見たらしいゆづは二人が同じ薬指にしている色違いの指輪を見た。 「…これですか?」 「これって何か意味あったりするのかな…」  子供の頃は首からぶら下げていた指輪は、父親から渡された『お守り』だ。二人の視線が互いの指に輝く輝石を見た。
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