第一話、暗雲せまる

6/12

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 かずはの指には、瑠璃(ラピスラズリ)が嵌められている。くれはの持つ水晶とは石が違うだけで、まったく同じデザインで作られていた。  まじまじと見る二人に、軽く手を振りながら、ゆづは明るく続ける。 「あんた達だったら、きっと大丈夫だよ」  ウインクすると簡易式の机と椅子を畳み、コンパクトに収納すると「じゃ、またね」と片手を上げ、ゆっくりと二人の前から去っていく。見送った後、二人は互いの指先を見て、それから顔を見た。 「そうです…忘れかけていましたが…」  ぽんと手を打って、そもそも探しに来た理由は、父から話があったからに他ならない。ゆづが指した未来に関係があるのだろうか。くれははふとそう思ったが、無邪気な妹の顔を見て思い直す。 《そうなのです! 私はお姉さんなのだから、しっかりこの子を守らなきゃ…っ!》  ぐっと拳を固め、決意を改め、何度もこくこくと頷きを繰り返す。隣で何やら空を見て呟く姉の裾をかずはは軽く引っ張った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加