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何をしているの?
既に暗闇に目は慣れていた。
私は眉間にしわを寄せて目をこらす。
桜の根元にいた人間は、どうやら土を掘り返しているみたいだ。
「どうして……?」
心音が寝ている弥生に聞こえそうなくらいに高鳴っていた。
こんな時に悟がいないなんて!
出張は社用車で帰って来てたから嘘じゃないだろうけど!
いや、今はそれどころじゃない。
私はもう一度人影をよく見た。
シルエットから女性だという事がわかる。
足元には大きく膨らんだ黒いゴミ袋が置いてあった。
なるべく音を立てないようにして私は深呼吸を繰り返す。
ずっと見ているとその人物が手を止めて息をつきながら顔を上へ上げた。
「まさか……!?」
月明かりと街灯に照らされたのはあのスプリングコートの女だった。
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