601人が本棚に入れています
本棚に追加
階下に降りると前には多恵子さんが歩いていた。
多恵子さんも物音に気付いたのだろう。
一瞬ほっとしたけど、私はつい反射的に物音をたてないようにして、脇にあるつつじの植え込みに隠れた。
コートの女が危険なのは間違いない。
できる事なら対面したくはなかった。
多恵子さんに悪い気がしたけど、影から様子を見守る事にした。
「あなた、何をしているの……?」
コートの女は驚きもせずに、微かに笑みを浮かべながら多恵子さんに振り返った。
「中富さんから依頼されたの……。花見のせいでゴミ置場は溢れ返ってるし、一人であれを分別して片付けるなんて無理でしょ?」
「ゴミ置場……?」
繰り返し呟きながら、多恵子さんは女の言っている意味を理解したようだ。
ゴミ置場の清掃や分別は当番の仕事だ。
普段ならゴミ置場が溢れ出す事はないし、分別もきちんとされている。
最初のコメントを投稿しよう!