悲しくはない

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俺が小学6年生で姉さんが中学2年生の時の春。 気持ちのよい風が吹くまだ少し寒い春の夜。姉さんは塾の帰りに通り魔によって殺された。突然ナイフで刺されて逃げたみたいだけど何回も何回も何回も何回も何回も刺されて出血多量で死んだ。犯人は捕まっている。ヘラヘラ笑って。どんな風に姉さんが逃げて、どんな風に死んでいったか警察に話したのだろう。だって予測にしては細かい細か過ぎる説明だったし。 母さんは姉さんの遺体を見て。なにか話しかけて。声を出さずに泣いて。気絶した。目を覚ましたのは一週間後。 その間に裁判やら何やらいろいろあって。 そして…目を覚ました母さんは俺を「雪恵」と言った。 柚という人間は元からいないみたいに。どれだけ回りが違うと言ってもふふって笑うだけ。 父さんも仕事が1番みたいな人だったから必然と俺は「雪恵」になった。
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