55人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、蛇口を止めていた一瞬がタイムロスとなって響き、人影を確認する事ができなかった。
自動ドアが開いて閉じる音がした。少しの落胆。
だが、入って行ったという事は用が済めば出てくるはずだ。
待てばいい。
なんだがよく分からない感情のまま、自動ドアが再び開くのを待っていた。
開く。子供が出てくる。
大嫌いな無機質な白いきらびやかさが、うしろ姿を照らす。
深い青の色を浮かび上がった。
「!?」
驚き。と何かで思わず声をあげそうになり、馬鹿のように手で口なんか押さえている間に、髪が青く見えた子供は歩みを進めてしまった。
黒の中に青は飲み込まれて消える。
後で思えば、子供なんだからその元同級生本人であるはずが無いと、待っている間にでも気付いても良かったはずだった。
が、そんな些細なきっかけとなったことなど忘れ去っていた。
そのころにはもう、あの深い青……群青というのかも知れないその色が、気になって仕方なかったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!