32人が本棚に入れています
本棚に追加
その音を不愉快に感じるが、今は早く離れることが先決だ。
まだ朝焼けにすら染まらない空を見て、駆ける。
今の俺は、自由なのだと思った。
――本当に?
…当たり前だろう。
空耳かと思い、無視して歩く。律儀に答える必要も無かったと反省した。
しかし、だ。
――痛いの?
再び聞こえた。しかも、それは同じ声だった。
――ねぇ、どうしたの?
おいおい、嘘だろ?幻聴かよ…。
口の端が歪んだ。嘲り笑いが顔に浮かぶ。
声は出ない。それが幸いした。
出ていたのなら、笑い声で気付かれていただろうから。
――大丈夫?
――独りが怖いの?
うるせぇよ…。
その後も、幻聴の問い掛けは止まなかった。
それらを聞いている間、俺は何故か懐かしさを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!