独り

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その音を不愉快に感じるが、今は早く離れることが先決だ。 まだ朝焼けにすら染まらない空を見て、駆ける。 今の俺は、自由なのだと思った。 ――本当に? …当たり前だろう。 空耳かと思い、無視して歩く。律儀に答える必要も無かったと反省した。 しかし、だ。 ――痛いの? 再び聞こえた。しかも、それは同じ声だった。 ――ねぇ、どうしたの? おいおい、嘘だろ?幻聴かよ…。 口の端が歪んだ。嘲り笑いが顔に浮かぶ。 声は出ない。それが幸いした。 出ていたのなら、笑い声で気付かれていただろうから。 ――大丈夫? ――独りが怖いの? うるせぇよ…。 その後も、幻聴の問い掛けは止まなかった。 それらを聞いている間、俺は何故か懐かしさを感じていた。
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