32人が本棚に入れています
本棚に追加
語調が幾ら和らげられていても関係無い。俺は今すぐ逃げ出したかった。
怖い。怖い。怖い……。
激しい倦怠感に襲われる。
不審に思ったのか、新聞配達が近付いてきた。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
「どうか、したッス?」
俺は、後退し続けた。
そして、背中に壁を付け、やっと現実に戻った。
…あれは、母さんじゃない。
「大丈夫?」
頷き、メモ帳とペンを取り出す。そこに、『大丈夫だ』と書いた。
彼女は安堵のため息をつき、それから一呼吸置いて言った。
「あんたの詩、綺麗ッスね」
はにかんだその顔が俺には眩し過ぎて、俺は目を細めた。
遠い存在だ。
そう感じさせられた、出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!