独り

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今はそれよりも、外に出よう。 静かに、静かに。と心の中で自分に言い聞かせる。 しかしどんなに気をつけても、床板は軋み、悲鳴を上げる。 泥棒みたいだな。 そう思うと、焦りが強くなる。 早く逃げなくてはいけないような気がしてくる。錯覚だとすぐにわかり、再び慎重に進む。 そうして玄関につく。確認すると時間は10分と掛かっていない。 少し、早かったかな。まぁ、いいか。 カラカラ。 小さな音がした。ドアがレールを走る音。 俺はこの音が嫌いだ。注意しても、必ずする。 誰も居ない、な。 周囲を見回したが、人影は見当たらない。 これなら大丈夫だろう。 そっと、音を立てないように外に出る。ドアを閉める時、再びカラカラという音がした。
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