第一章

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その光景は、先程までの考えを全て否定させた。 『こんな大量の本、有り得ない…』 やはりこの建物はおかしい。分かっていたことを再確認させられた。 外見ではこんなにも広い空間はなかった。空間か次元が違うとしか思えない。 その日二度目の驚愕をしていると、横から楽しげな笑い声が聞こえた。 はっとして横をむくと、楽しげな声のままの表情を浮かべて、こちらを見ていた。 「いやぁ失礼。別に、貴方がおかしい訳じゃないんです。 此所を見た人は、皆さんが驚きますから。ただ驚いていただくと、嬉しいですね。 集めたかいがあった。と感じます。」 「え…自分で集めたんですか? これだけの量を?」 「ええ、勿論。 素晴らしいでしょう? これだけ集めるの多大な歳月を要しました。 さて立ち話も何ですし、歩きながら話しましょう。」 そう言われて、本棚の間を抜けて歩いて行った。本棚をみてみると、実に多種多様な本があった。日本語の書物は勿論、英語、フランス語、イタリア語、ヘブライ語、アラビア語、中国語、ロシア語など、果てには全く分からない言語で書かれた本や、 地球とは根本的に違う文字体系の本もあった。 その人は前方でゆっくり歩きながらも得意げに、あちらこちらを指さしながら本について喋っていた。 あれはセリアワールドの始祖の教典のコピーで、こちらはディスフィアーの冥王の秘宝の、死者の書なんですよ。 なんて言ってるが、言ってることの意味が全く分からなかった。 セリアワールド?ディスフィアー? 始祖に冥王。 自分の知らない単語ばかりだ。 .
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