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それならば、言わなければいいかと言えば、そうでもない。
隠す事自体は簡単だ。その人の言葉に乗っかってしまえば良い。彼は自分を人間だと思ってないようだから、はぐらかせるはずだ。
しかし、今更気付いてしまった事だが、此所には人間でない者、言い換えると此所の住人でなら対処出来る事や、通常無害のはずが人間にとっては有害な事がないとはいえず、
下手をしたら、既に何らかの病気にかかっているかも知れない。
人間だと打ち明けて、色々と説明を欲しい気持ちもあった。
『どうせ帰るまで隠し通すことは不可能なんだし、ここで打ち明けてしまおう。』
と心に決めた。
「大丈夫ですか?お~い、返事をしてください。」
はっと気が付くと、目の前ではその人が心配そうにこちらを見ていた。
俺の悪い癖だ。一つの事を考えると、周りが見えなくなる。
「あ、すいません、ちょっと考え事をしていたもので…」
その言葉に安堵の表情がうかぶ。どうやら考え込む時間が長かったようだ。
「あ、気がつきましたか。いや、いいですよ。良かった。いくら何をしても反応しないもんですから、具合でも悪いのかと、少し心配しましたが。
さぁ、歩きましょう。」
と言ってその人はまた歩き始めた。
しかし、いっこうに歩こうとしない俺を見て、怪訝な顔をした。
「どうしたのですか?はっ、やはりどこか具合が悪いのですか?」
「いや、そうじゃないんです。
さっきの言葉なんですが。」
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