第一章

11/29
前へ
/34ページ
次へ
そんなこっちの事情を知らずに、話が進んだ。 「さて、早速本題に入りましょうか。 まず貴方が今一番危惧している事……この世界が貴方に及ぼす影響についてですが、何にもありません。」 「……………へ? 何にもないんですか?」 「ええ、何もありません。この空間は、繋いだ世界と大気の構成成分が同化していますから。」 …何とも呆気なく言われてしまった。 俺個人としては、少しくらい影響があった方が面白かったのだが。 「本当に…何にもないんですか?」 「ええ、もしかして、『この空間からの影響がないなんてつまらない。』なんて思ったりしているのでしょうが…… 一々お客さんが入る度に何らかのトラブルが発生してしまったら、大変な事この上ない。 変な病気などを持ってってしまったらこちらの責任ですし。 お客さんの安全は保障します。」 取り敢えず残念な気持ちも否めないが、身の安全は確保された事は確からしい。 一安心と息を吐いた。 「ですが……」 そう思ったのも束の間だった。さっきまではまだ安穏とした空気があったのだが、その言葉で一気に空気が張り詰めた。 『ですが』だと、何かあるのだろうか? 「問題は貴方がここにいる。その事実なのです。」 その言葉が、俺の心を凍り付かせた。俺がここにいることが問題。つまりおれは居てはならない。ならば、それを解決するには…… 「ま、待って下さい、それはどういう事ですか!? 俺は、居てはいけないのですか!?」 その言葉にその人は淡々と、 「端的に言えば、その通りです。」 と言った。 焦りそうになったが、その言葉には続きがあった。 「何故ならば、貴方は既に気付いているでしょうが、ここは言わば聖域。悪く言えば、あなた方人間如きは、普段入って良い場所ではないのですし、また入れる場所ではないのです。」 「ならば、何故俺は入れた「人の話は最後まで聞きましょう。」 俺が口を閉じると、その人はにっこりと笑って、話を続けた。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加