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そんなこっちの事情を知らずに、話が進んだ。
「さて、早速本題に入りましょうか。
まず貴方が今一番危惧している事……この世界が貴方に及ぼす影響についてですが、何にもありません。」
「……………へ?
何にもないんですか?」
「ええ、何もありません。この空間は、繋いだ世界と大気の構成成分が同化していますから。」
…何とも呆気なく言われてしまった。
俺個人としては、少しくらい影響があった方が面白かったのだが。
「本当に…何にもないんですか?」
「ええ、もしかして、『この空間からの影響がないなんてつまらない。』なんて思ったりしているのでしょうが……
一々お客さんが入る度に何らかのトラブルが発生してしまったら、大変な事この上ない。
変な病気などを持ってってしまったらこちらの責任ですし。
お客さんの安全は保障します。」
取り敢えず残念な気持ちも否めないが、身の安全は確保された事は確からしい。
一安心と息を吐いた。
「ですが……」
そう思ったのも束の間だった。さっきまではまだ安穏とした空気があったのだが、その言葉で一気に空気が張り詰めた。
『ですが』だと、何かあるのだろうか?
「問題は貴方がここにいる。その事実なのです。」
その言葉が、俺の心を凍り付かせた。俺がここにいることが問題。つまりおれは居てはならない。ならば、それを解決するには……
「ま、待って下さい、それはどういう事ですか!?
俺は、居てはいけないのですか!?」
その言葉にその人は淡々と、
「端的に言えば、その通りです。」
と言った。
焦りそうになったが、その言葉には続きがあった。
「何故ならば、貴方は既に気付いているでしょうが、ここは言わば聖域。悪く言えば、あなた方人間如きは、普段入って良い場所ではないのですし、また入れる場所ではないのです。」
「ならば、何故俺は入れた「人の話は最後まで聞きましょう。」
俺が口を閉じると、その人はにっこりと笑って、話を続けた。
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