第一章

17/29
前へ
/34ページ
次へ
「ところで、」 「ん?」 「余り良いとは言えなかった今回の旅でもな、お前にとっていい事と悪い事があったんだが……どちらから聞きたい?」 「ほう、それは興味深いな。どれ、言い方から聞かせて貰おうか。」 「ふ、驚くなよ。」 と言って使い古したバックの中をゴソゴソと漁ったかと思うと、袋を出してきた。 「開けてみろ。」 その言葉で手に取って開けて見ると、一冊の本が入ってた。その表紙を見た瞬間、驚きの余り本を落としそうになってしまった。 「お……おお、これは……!」 「そう。お前が探し求めていた古いシリーズ本の、最終巻だ。向こうの書店でみかけてな。買っておいてやったぞ。」 「…………きょ…お……だ。」 「ん、なんだ?良く聞こえなかったんだが?」 「…今日は俺のおごりだ! 大量に飲み食いしてくれ!!」 おおー!と声がするが、そんな言葉は耳に入らなかった。 手には数年前から探し求めていた本がある。 何処の書店でもなくて、目の前の奴に見つけたら買っておいてくれ。と頼んではいたが、半ばあきらめてたのだ。 その本が今自分の物になったのだ。 もう幸せの絶頂だ。 「さぁどんどん頼んで良いぞ! 何なら次の旅費をある程度なら負担してやる。 よし、飲むぞー!」 「おお!それは嬉しい誤算だ。 なら次は物価が高くて手が出しずらかったアメリカ横断でも…… いや、シベリア鉄道からヨーロッパ一周でもいいな…」 ああ、幸せ…… 俺はその余韻に浸りながら、ビールを飲んだ。 格別にうまかった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加