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「ところで、」
「ん?」
「余り良いとは言えなかった今回の旅でもな、お前にとっていい事と悪い事があったんだが……どちらから聞きたい?」
「ほう、それは興味深いな。どれ、言い方から聞かせて貰おうか。」
「ふ、驚くなよ。」
と言って使い古したバックの中をゴソゴソと漁ったかと思うと、袋を出してきた。
「開けてみろ。」
その言葉で手に取って開けて見ると、一冊の本が入ってた。その表紙を見た瞬間、驚きの余り本を落としそうになってしまった。
「お……おお、これは……!」
「そう。お前が探し求めていた古いシリーズ本の、最終巻だ。向こうの書店でみかけてな。買っておいてやったぞ。」
「…………きょ…お……だ。」
「ん、なんだ?良く聞こえなかったんだが?」
「…今日は俺のおごりだ!
大量に飲み食いしてくれ!!」
おおー!と声がするが、そんな言葉は耳に入らなかった。
手には数年前から探し求めていた本がある。
何処の書店でもなくて、目の前の奴に見つけたら買っておいてくれ。と頼んではいたが、半ばあきらめてたのだ。
その本が今自分の物になったのだ。
もう幸せの絶頂だ。
「さぁどんどん頼んで良いぞ!
何なら次の旅費をある程度なら負担してやる。
よし、飲むぞー!」
「おお!それは嬉しい誤算だ。
なら次は物価が高くて手が出しずらかったアメリカ横断でも……
いや、シベリア鉄道からヨーロッパ一周でもいいな…」
ああ、幸せ……
俺はその余韻に浸りながら、ビールを飲んだ。
格別にうまかった。
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