第一章

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共に程良く酔いが回ってきたとき、ふとさっきの言葉を思い出した。 「なぁ、さっきの話のさぁ、俺にとって悪い事って何だったんだ?」 目の前で食事にがっついてる奴(タダめしなら胃袋が拡張するのだろうか)に聞くと、一瞬何の事だ?と眉をしかめたあと、しまったなぁとでも言いたげに今度は顔全体をしかめた。 「うーむ、その話か。余り話したくないのだが……聞きたいのか?」 「ふん、話したくない理由は、俺が気分を害して、ここまでのみくいした代金は奢りじゃない。と言い出すのが怖いのだろう? 心配するな。俺も男。男に二言はない。」 それを聞いて、あからさまにホッとした表情を浮かべる。 ふん小心者め。ここまで恐れるか? 小さく笑って、ジョッキを口につける。 「実は俺…………彼女が出来たんだ。」 手に持つジョッキが急激に重くなった気がした。 それを力なくテーブルに置く。 「な……マジ…か?」 ああ、マジだ。と言われて、更なるショックを受ける…… 「い、いつからだ?」 「ブラジルに行く直前だ。俺の境遇も理解してくれた、良い人だ。」 こいつはブラジルには三か月程行っていたから、それくらいの間は俺に黙っていたこととなる。 くそ、なんでお前が…理不尽と分かっていても、嫉妬からくる憤りは収まらない。 こいつとは、彼女いない歴=年齢という黄金の方程式を共に成り立たせてきた戦友だったのだ。 その理由は言うまでもない。共に不細工で、女と喋るのが苦手なのだ。 俺の顔なんて、垂れ下がった目尻。高いじゃなく広い鼻、少し腫れぼったい唇。 カッコいいと呼ばれる要素を全て否定していた。 そいつだって………いや、止めておこう。 とにかく、いつかくる時は分かっていた。分かっていたのだが、実際に来るとショックがでかかった。 裏切り者め……
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