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共に程良く酔いが回ってきたとき、ふとさっきの言葉を思い出した。
「なぁ、さっきの話のさぁ、俺にとって悪い事って何だったんだ?」
目の前で食事にがっついてる奴(タダめしなら胃袋が拡張するのだろうか)に聞くと、一瞬何の事だ?と眉をしかめたあと、しまったなぁとでも言いたげに今度は顔全体をしかめた。
「うーむ、その話か。余り話したくないのだが……聞きたいのか?」
「ふん、話したくない理由は、俺が気分を害して、ここまでのみくいした代金は奢りじゃない。と言い出すのが怖いのだろう?
心配するな。俺も男。男に二言はない。」
それを聞いて、あからさまにホッとした表情を浮かべる。
ふん小心者め。ここまで恐れるか?
小さく笑って、ジョッキを口につける。
「実は俺…………彼女が出来たんだ。」
手に持つジョッキが急激に重くなった気がした。
それを力なくテーブルに置く。
「な……マジ…か?」
ああ、マジだ。と言われて、更なるショックを受ける……
「い、いつからだ?」
「ブラジルに行く直前だ。俺の境遇も理解してくれた、良い人だ。」
こいつはブラジルには三か月程行っていたから、それくらいの間は俺に黙っていたこととなる。
くそ、なんでお前が…理不尽と分かっていても、嫉妬からくる憤りは収まらない。
こいつとは、彼女いない歴=年齢という黄金の方程式を共に成り立たせてきた戦友だったのだ。
その理由は言うまでもない。共に不細工で、女と喋るのが苦手なのだ。
俺の顔なんて、垂れ下がった目尻。高いじゃなく広い鼻、少し腫れぼったい唇。
カッコいいと呼ばれる要素を全て否定していた。
そいつだって………いや、止めておこう。
とにかく、いつかくる時は分かっていた。分かっていたのだが、実際に来るとショックがでかかった。
裏切り者め……
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