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「はぁ、お前が躊躇った理由が分かったよ。」
「う、うむ、分かってくれたか…」
ああ、俺がその立場でも躊躇うだろうからな。
といい、先ほど置いたビールに口をつける。
そうなったときの事を想像してみると、同じ光景が脳内で繰り広げられて、思わず苦笑してしまう。
「しかしだな。」
考えていると、気まずそうにしていたそいつが話し始めた。
「物事は考えようだ。
ほら、お前が俺の話を聞いたとき、どう思った?」
「お前に出来て俺に出来ないなんて理不尽だ。」
「そう正直だとムカつくな…
しかし、そう思ったんだろう?ならばこう考えるのだ。お前に出来るなら、俺にだってそのうち必ず出来るはずだ!とな。」
「へぇ…確かにそれもそうだな…」
「ああ、そうだとも。お前のような男に何故彼女が出来ないのか不思議でならん。」
「お世辞はいい。何も出てこんぞ。」
「いやいや、お世辞なんかではない、俺の本心だからな。」
と真剣な顔で言ってきてくれる。
少し気恥ずかしいが、まんざら悪い気はしない。
実際、俺に出来てお前に出来ない筈はない。そう言われたことは、俺に少しだけ、安堵感をもたらしてくれた。
20年以上彼女の存在が無いと、このままで一生を送ってしまうのでは、という漠然とした不安も出てくるのだ。
一生独身、そんな虚しさがある俺の心に、そいつの台詞はほんの少し、本当にちょびっとだけども確かに響いた。
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