第一章

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ベンチに腰掛けたおれは、少し休憩したあとにおもむろに本を取り出した。 買った本を、初めだけ読もうとしたのだ。 けど、その本は予想より面白かったから、止まんなくなったのを覚えている。 おれは集中力が高いらしくて、一つの事に集中すると周りの事を気にしなくなる。 だからそのときもその本を、苦手な夏の暑さも、五月蠅く鳴く蝉の鳴き声も気にせずに、ずっと読んでいたのだろう。 どれだけ本に没頭してたのか、 買った本を7割程読んだ辺りで、首が痛くて顔をあげた。 気が付くともう空の西の端には夕焼けが世界を照らし、東の空には夜が降りてきていた。 その空が余りに幻想的で暫くぼーっと見とれていた。 夕焼けの朱と、暗い空の青とが混ざりあって、美しいグラデーションが出来ていた。 その中に大きな三日月と、明るく光る星が輝いていた。 首の痛みも忘れるほど、綺麗だった。 そんな時。視界が揺れた。 眩暈にもにた感覚で、本を読み過ぎたかな…? と思った。それにあわせて、思い出したかのように首の痛みも襲ってきた。 とりあえず目を擦ってそのまま首を休めるが、頭はグラグラし始め、瞼の裏では、眼が回っていた。首の痛みは休めているというのに、どんどん強くなっていった。 そしてもう我慢出来ない、と感じて呻き声を上げそうになった時、痛みがすっと引いていった。 そして再び目を開けた時には、 目の前、空き地だった筈の土地に、古ぼけた家が出現していた。 .
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