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テクテクとその人の後ろを歩いて玄関にたどり着いた。
立て付けが悪いのか玄関がなかなか開かなくて、開けようとしている。
その姿が非現実と思える世界の中、妙に現実味を帯びてて、少し笑えた。
ようやく開いた戸から店のなかに入って周りを見渡したが、そこは外見通り【民家】と呼ぶにふさわしいたたずまいだった。
玄関の横には下駄箱があり、その上には熊(?)の置物があって、逆側には誰が書いたのか分からない絵が飾ってあった。
目の前には真直ぐのびる廊下があり、奥からはヤカンが沸く音がしていた。
『火にかけたまま出てきた?不用心。いや、それよりもまずガス(もしくは電気)が通っているのか?
ついさっき現れたのに?』
なんて事を考えていたら、その人は靴を脱いで、廊下を進んだ先にある扉の一つの前まで行き、こちらを招いた。
それに従って靴を脱いで向かい、扉の前についた。
何処をみても普通の民家。生活感もあり、一瞬で現れた事は眼の錯覚で、本当は元からあったのかなぁ。なんて思えた。
『頭痛かったしなぁ。ぼんやりしてて分かんなかったかも。』
そう考えれば、そうだったかなとも思えてしまった。
「すみません。お見苦しいところで。」
突然そう話しかけられて少し困惑する。
「あ、いや、そうでもないっす。いや、ないです。」
「いやぁ、私の趣味で経営してますので、本は家のなかの一室にあるんですよ。
此所です。」
「へぇ…………!!?」
の二の句が継げなかった。
その人が開けた扉の光景が有り得なかったから。
何処までも果てしなく並んだ本棚。そしてそこにぎっしり詰められた本。
天井は三メートルほどあって、どんな図書館に行ったとしても見られないだろう光景がそこにあった。
世界中の本が集まっていると言っても過言じゃない程の本。
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