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少し強い風が頬を掠める。
風の行方が気になった俺は、窓を吹き抜けた風の行方を探るべく、灰色の空を見上げた。
手にしていた青いしおりが、流れるように手元から離れる。
思いの他ゆっくりと舞い上がるそれは、今の自分を暗示しているようだった。
ーーー…
「幸村ー…幸村…どうした?」
「え…?」
空を見上げていた俺は、なまえを呼ばれたことに驚いて、声がするほうに顔を向けた。
「あぁ…ブン太か…ー」
見知った顔に安心したせいか、軽い口調になりながら微笑する。
「俺で悪かったな。」
「ごめん。そんなつもりはなかったんだけど…ついね…」
「わかってるって…冗談だよ。安心した顔してるってことは信用してくれてるってことだし。」
「ふふっ…ありがとう。」
「…それで、どうしたんだ?ぼーっとしてたけど。」
「…空を見てたんだ。今日テニスできるかなぁって思ってさ。」
「そういや天気予報で曇りっていってたな。この調子じゃあ曇りってゆうより雨降りそうだけど。」
ブン太が窓の外を見ながらそう言った。
「雨降ってほしくないなぁ、部活できなくなるし。」
「本当にテニスが好きなんだね。」
「それはみんな同じだろぃ。」
当然のように言うブン太に、俺は返答のしようがなかった。
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