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「ブン太がね、あそこに立ってる女の子知らないか、なんて聞くからさ。」
視線を少女に戻しつつ説明すると蓮二は“ああ、あの子か”なんて呟いた。
「分からないんだよ、俺にも。」
「分からない?」
「いや、名前やクラスはわかるんだが…」
なんとなくだけど、言いたいことは理解できる。
どこがどう分からないのか自体、分からないんだろう。
じゃあさ、とブン太は切り出す。
「わかることだけでいいから教えてくれよ。」
一定の間隔を保ったまま、静かな声で言う。
少女は未だにそこを動こうとはしなかった。
ぼんやりと空中を見つめたまま立っているだけだ。
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