その女、京に入る

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「近藤と土方か」 月華はその二人を見ると目を細めた。 どうやら沸々と沸き上がってくる怒りを必死に押さえているようだ。 ここは俺の出番だな。 「月華、少し落ち着け」 人間の姿のまま塀を飛び降りて彼女に駆け寄り、頭を優しく撫でる。 彼女は何処かほっとしたような表情を浮かべていた。 「この度は本当に済まないことをした。今は攘夷志士による攘夷活動で手が一杯になっていてな。ここも何度襲われそうになったのか分からんくらいなんだ。隊士達を殺したことの罪は咎めん」 「近藤さん、何を「当たり前でしょ。そっちが私を呼んだの。私はただ自分の命を守っただけ」 近藤達の顔を一切見ることなく、刀についた血を拭き取りながら淡々と話す。 それはまるで、自分に言い聞かせているようだった。 刀を鞘にしまい、それを片手で持ってやっと三人を見た。 そして彼女は俺でも驚くような行動な出た。 「飯」 「え?」 「だーかーら、飯は用意出来てるんでしょうね?私お腹が減ってるの。ね、憑黄泉」 「えっ?あ、あぁ。」 笑みを浮かべて楽しそうに話す。 俺の予想だが、きっとこの三人を気に入ったのだろう。 全く人間はまだまだ考えていることが分からぬな。 「総司、刀を収めろ。客人は飯をご所望だとよ」 「…はい、土方さん」 不服そうな表情だったが、彼女の笑みを見て戦う気力を無くしたのだろう。 素直に屯所内に入っていった。 「憑黄泉、私達も入るわよ」 「あいよ」 俺は月華のこの何とも言えない雰囲気が好きなのかもしれないな。
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