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「あぁ?なんだ、小娘…」
「ふふ、ただの小娘やないですよ」
「じゃあなんだと言うのだ!!」
「…あんたを殺すもんや」
少女の声は氷のように冷たかった。
言い終わらないうちに男の体は真っ二つに斬り裂かれていた。
刀についた血を紙で拭き取りながら、自分の着物飛び散った血を見て嫌そうに顔をしかめる。
脳味噌や臓器、夥しい程の血が流れているのにもかかわらず、それを気持ち悪がることなくじっと見つめていた。
黒猫がつんつんと"腕だったもの"をつついていたのを見ると、黒猫を抱き上げて自分の肩に乗せる。
老婆はただそれをぼんやりと見続けることしか、出来なかった。
「お婆ちゃん、お婆ちゃん。」
今しがた恐ろしいことをしたにもかかわらず、少女の声は鈴のように軽やかで可愛らしいものであった。
先程起こったことの衝撃で思わず体をビクつかせるが、老婆は少女に目をやる。
「お婆ちゃん、すんまへん!店先でこんなことしてもうて…」
シュンとして項垂れている姿はその年頃の少女そのものであった。
「いいんだよ、そんなの。それよりも助けてくれてありがとうね。」
少女はその言葉を聞けて安心したのだろう、感情が乏しい顔に微笑みが浮かんだ。
何処と無く猫も喜んでいるような気がする。
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