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同じころ、ナーランダ内のラクシュミ・シティーにある公立中等学校の体育館内では少年達が汗をかきながらバスケットボールの試合をしていた。相手のプレイヤーにマークされ、ボールを味方にパスできない天然パーマの髪型が似合うラテン系の少年カールがいた。
「くそっ!こんなところで足止めされるなんて」
そう疲れた声で呟くと彼の動きを止めていた黒髪の白人少年のハンスが腕を大きく広げた。
「パスできないままタイムアップすりゃ、この俺のランチをまたおごる羽目になるな、カール」
そうハンスが威張ったのもつかの間。
「あとは僕に任せろ!」
「―――な、なに?!」
ボールを持ったカールに気を取られ、カールの後に向かって走る金髪の白人系の少年マットに気づくことができなかった。そのためにハンスはカールにパスを許してしまった。ボールを受け取ったマットはそのままスピードを維持し、二人のディフェンスをうまくかわし、ランニングシュートを決めた。その瞬間、ブザーが鳴って、少し遅れて審判の笛が鳴った。
「ありがとうマット、おかげで―――」
そう言いながらカールはマットの左肩に右手を置く。 「あのときは、カールのパスのおかげでシュートできたまでさ」
マットもカールの左肩に右手を置き互いに笑いあった。
「ハッハッハッ、ところでさ」
そう言いながらカールは体育館の片隅に目を送った。カールの目線の先にはジャージを着た茶髪の日系人少年アキラが顔をうずめて体育座りをしていた。
「アキラのやつ、また見学だよ。あいつ、小学校のころから運動しないで大丈夫か?」
「仕方ないだろ、アキラには、きっと人に言えない事情があるんだよ」
「でも、そのおかげで俺たちは4対5で試合をさせられて、 危うくハンス達にランチをおごりかけるところだったんだよ」
「ランチの件って、お前がこのまえハンスに大口を叩いたからじゃないか」
「そりゃ、そうだけどさ...」
すると言葉が詰まっているカールの後頭部に女子コートからバレーボールが高速で直撃した。
「イテッ!」
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