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「本当にそれだけか?まだ隠している事は無いか?」
「ん~、それ位。あ、たまに精神が共有される時があるけど、寝てる時位だから多分大丈夫。」
「よし、OKだ。お前との契約を了承する。」
「あら、あれだけあーだこーだ言ってたのに、ずいぶんあっさり決めちゃうんだ。」
「時間がない。」
サクラの方を見る。光が収束している。そろそろ限界だろう。サクラの潜在的な力はワタシの限界値より低いものの、安定性と信頼性はワタシのそれより遥かに高い。それ故にあそこまで持ってはいるがそろそろ本当の限界っぽい。
「解ったよ。ほら。」
チビッコが短刀をよこす。
「それで軽く指を切れ。」
「解った。」
ワタシは左手の人差し指に刃を入れる。
「では、契約を始める。汝、クロスタン・L・ワイズマン・・・は後からもらった名前だし、5121は名前ですらない。あれ?貴方、真名が無いの?。」
「こう見えてかなり良いとこの子だったんだがな、妾の子供だったから真名はもらえなかったんだよ。今自分で決めて良いのなら、前から名乗りたかった真名はある。」
「じゃあそれでいいや。ただし、名乗りを上げる以上は、その真名にそった生き方をしなければならなくなるから。そこらへん考慮しといてね。」
「それじゃ、行くぞ!我が真名は盾。 弱き者を守る守護の蒼盾だ。」
「了承した。汝、守護の蒼盾との契約を結ぶ事に我、異論無し。血の契約のもと主従の関係を結ぶ也。」
切った指先の血が チビッコの中に吸い込まれてゆく。数秒後、塞がった傷口と、右手にずしりとした感覚。
「随分とガタがきてる剣だな。こんなんで本当にサクラを救えるのか?」
「任せなさい。この仕事が終わり次第、刃の研ぎと、鍔より下の新調を約束してくれるなら、サクッとこの事態解決してみせるよ。」
「給料日前なんだが、サクラの命がかかってるんでな。至急頼むぜ。」
「わかりました。とりあえずあの子と杖の繋がりを切断しますから、あのあたりを全力でぶった切って下さい。」
刀をふりかぶると、べしゃっ。という音がした。
刀を持っていた腕が付け根から落ちていた。一瞬何が起きたか解らず、その後に来た激痛で魔術の副作用の事を思い出す。存在否定魔術は構成が少しでもズレると、魔術師の体にも悪影響を及ぼす。
取れた腕が付け根部分から黒い塊に浸食されて、消えていく。
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