番外編 先生のちょっとした長話

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「ちっ、此処に残ってるのは我々だけか?」 光の矢が頭上を飛んでいき、近場で爆発音が響く。 「残念ながら。 リヴァイアサン殿はゴルゴダで敵の大将と相討ち、ベルフェゴール殿は第5野戦病院で治療中。リリス殿は最後の魔法を使うとかで、地下神殿に入りました。 他の将軍達とは連絡すらつきませぬ。」 なんとも絶望的な状況だ。リリスの魔法があれば、まだ全軍撤退のきっかけ位は掴めたかもしれないのに。 ドン!という音とともに、伝令兵の胸に槍の穴があく。 口から血を吐いて倒れる伝令兵。 私は腰に吊した愛剣を抜き槍兵を切り捨てる。 「致命傷だな。今の内に遺言をきいておこうか?伝令兵。」 「いえ、結構です。 私はまだ祖国の土に還れます。 あっちで戦ってるヤツらを思うと、そんな贅沢言ってられませんよ。」 こふっ、と血を吐いて息絶える伝令兵。 「これでこっちは私が最後の一人か。 360度見渡す限り敵さんしか見えないのがつらいねえ。」 深呼吸をして呼吸を整える。 「まあ、これで遠慮なくアイツを解放出来るんだけど。」 血の刻印を起動させ、体の中に魔法陣をイメージする。 「我が血に宿りし始まりの蛇よ。 全てを呑み込む餓えたる蛇よ。 我が右腕を贄に眼前に広がる者達を食らえ。」 右腕を空へ掲げる。持っていた剣をよりしろにして実体化した単眼の大蛇が戦場を蹂躙していく。 が、無数に湧いてくる兵達におされて次第に見えなくなる。 「焼け石に水か。リミッターがなければ総大将の首位は取れたんだけどなあ。 」 バキン!、と剣が砕け散り、右腕が消失する。 「私も潮時って事か。」 ガクンと片膝をつく。 ちょうどその時だった。魂が抜かれていく感覚。体が半分になった様なそんな状態になったのは。 「ソウルイーター?」 魂を奪う魔法だ。 リリスか? 地下神殿に入ったリリスが最後の魔法として選んだのがこの魔法だったのは予想外だった。 「こんな時にっ!」 最後の気力を振り絞って立ち上がる。 パタパタと倒れていく敵兵達。 遠くの方に雑兵とは違った格好をした敵兵を見つけて、そっち方向へ重くなった体を引きずって向かう。 「名のある将軍殿とお見受けいたします。 私の名は魔王軍第88大隊隊長ウロボロスと申します。 これ以上の戦闘は無駄に兵を殺すだけです。この魔法が完成する前に撤退して下さい。 」 「残念だが、それはできん相談だ。 我が名ガブリエルと主の為に撤退は許されんのだよ。」
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