四章 彷徨うもの

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(さあ、どうするの?いつもとは反対に、私に泣きついてくる?それとも、馬鹿みたいに取り乱しちゃうの?)  そんな彼の姿を想像し、期待を膨らませるミオン。  しかし、その彼女の期待を裏切るかのように、当のクロスはというと特に驚いた様子も見せず、普段通りで至って冷静な様子であったのだ。  そして、彼はぶっきらぼうに言い放つ。 「とりあえず、聞いてやるから言ってみな」  ミオンは、その言い方にムカっとくる。 「聞いてやるですって?それが人にものを尋ねる態度なの?」  そう強い口調で言い放つと、クロスに突っかかっていった。  そんな彼女の様子を見て、クロスは一つ溜め息を吐く。 「ふぅ……お前がどんな情報を手に入れたかは知らねえが、今からそこへ向かったところで多分間に合わねえだろう。この間の砦のように、奴のアジトらしき場所を見つけたってのなら話は別だが、そうでないなら無駄足になる可能性のほうが高い」 「あ……」  その言葉でミオンは気付いた。  クロスが『彷徨うもの』の特性を知っていること、そして彼女が掴んできた情報を敵の現在地だと思っていることに……
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