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すると、ミオンはニヤッと笑みを溢した。
そう……現時点では、まだまだ彼女の立場のほうが優位なのだと確信したからである。
「残念でした。私はねえ、そのアジトってやつを掴んだの。それも正真正銘本物のね」
自分のその優位性を示すために、ミオンは己の手の内を明かす。
すると、さすがのクロスも今度は顔色を変えた。
「アジトだと……本当なのか?」
「ええ、『彷徨うもの』がこっちで一仕事終わった後に帰還する場所ね」
ミオンは、得意げな調子でそう言った。
「何処だ、それは!?」
この時のクロスは、明らかに先程までとは違っていた。このような慌てた様子の彼をミオンは見たことが無い。
そして、これこそが彼女が見たかったものなのだ。
ミオンは薄ら笑いを浮かべると、勿体ぶった口調で話をする。
「どうしよっかな~。けど、そっちは何も教えてくれないのに、私にだけ話をさせようなんて、ちょっと都合よくないかな~」
「てめえ……」
ミオンの様子から、簡単には口を割らないだろうことを悟ったクロスは、彼女に向かって鋭い視線を投げ掛ける。
だが、上の立場にいるため余裕を持っているミオンは、なんなくそれを受け流して、不敵な態度で言葉を返す。
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