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「まっ、私はあんたとは違って心が広いから、教えてあげてもいいわよ……ただし!」
ミオンは、ビシッと右手人差し指をクロスの眼前に突き出した。
「あなたと『彷徨うもの』の関係について教えてくれたらだけど」
「ちっ……」
クロスは、やはりそうきたか……というような顔をしている。
何となく、話の流れからこうなるだろうことは予測が出来ていたのだった。
「さあさあ、どうするのよ。私はどっちだっていいんだからね」
そう言って、彼女はクロスを急かす。
クロスはしばらく考える素振りを見せた後……
「分かった……」
仕方が無いといった様子でそう答えた。
その瞬間、これまでで最高の笑顔をミオンは浮かべた。
『彷徨うもの』についての情報は、先程ルヴィ達から粗方教えられており、彼女が本当に知りたかった情報は既にほとんど得ているのだが、いつの間にかクロスの口から『彷徨うもの』との関係を話させるということが、彼女の目的にすりかわっていたようである。
そう、ミオンの中では自分とクロスとの勝負みたいになっていたのだ。
クロスにはそんなつもりはまったくないのであるが、勝気なミオンの中では勝手に戦いが始まっていたのである。
そして、ようやく強固だったクロスの壁を打ち破り、彼の口から真実を話させることで、今ミオンは勝負に勝ったという達成感を得ていたのだった。
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