四章 彷徨うもの

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 しかし、それもクロスの次の言葉で水を差されることとなる。 「だが、今はまだ言えねえ。全ては、『彷徨うもの』を倒してから話す」  その言葉にミオンの表情が変わる。 「……何よそれ?その時になって、また駄々こねるんじゃないでしょうね?で、結局はうやむやにするつもりなんじゃないの?」  彼女は、結局クロスは話をするつもりがなく、この場を適当にやりすごすためにそう言ったのではないかと勘繰っている。  だが、クロスは真剣な眼差しをして言うのであった。 「お前の考えているとおり、奴と俺の間には浅からぬ因縁がある。だが、ここでそれを話すのは、この先の戦いに影響を出すかもしれねえ。それは、お前への影響という部分もあるが、一番は俺自身の決意の中に揺らぎが生まれるんじゃないかってことだ。自分の中では強い思いを持っているつもりでも、それを人に漏らすことで嫌でも自分の弱さってやつを思い出しちまう。戦いはこれからなんだ……感傷に浸るのはその後にしたい」  黙ってクロスの言葉を聞いていたミオンは、彼が話し終えたことを確認すると、ゆっくりと自分の答えを口にする。 「……そう、分かったわ」  意外にもミオンは、すんなりとクロスの申し出を受け入れるのだった。
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