四章 彷徨うもの

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「なんか、この世界の隙間だとか言ってたんだけど、普段『彷徨うもの』はそこに居るらしいの。それで、人間の魂を欲した時だけこっちの側に現れて、目的を遂げればそこに帰るみたいなの。だから、あいつを捉えるにはアジトに居る所を狙わなきゃ駄目なんだって」  それを聞いた瞬間、クロスは何処か憎々しげに呟いた。 「ちっ……やっぱりそういうことだったのか」  その言い方からは、やはり彼もある程度そういうことを予測していたのだと窺い知れた。  さすがに時空の狭間など詳しい部分までは知らなかったようだが、これまで『彷徨うもの』を追ってきたクロスには、まともに追っていたのではいつまで経っても捉えきれないということを、己の身をもって感じたのであろう。  しかし、クロスはここで一つの疑問を覚える。そして、すぐにそれを声に出した。 「……待て。お前は一体誰からそんなことを聞いた?」  そう、それは長い間『彷徨うもの』だけを追っていたクロスでさえ知らなかったことである。  そのようなことを知る人物とは、一体何者なのか……  ミオンは、彼の疑問に答えるべく口を開いた。 「えと、ルヴィとアルミスって言う二人の旅人風の女性なんだけど……」 「何者だそいつらは?」  しかし、そう尋ねられてもミオンにも答えようが無い。彼女自身、あの二人については名前以外に知りえることは無いのだ。
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