四章 彷徨うもの

10/32
前へ
/218ページ
次へ
「それは……分かんない。ただ、悪い人には見えなかったし、それに……」 「それに、なんだ?」  クロスはミオンの言葉の続きを促す。 「その時空の狭間に行くための手段もくれたし……」  その言葉に、クロスは反応を示した。そして、彼はニヤッと不敵な笑みを浮かべる。 「フッ……面白いじゃねえか。なら、それを使ってみれば全てがハッキリする」 「まあ、そりゃあそうだね」  ミオンはあっさりと頷いた。  彼女もクロスと同じで、ごちゃごちゃと考えるよりは、まず飛び込んでみるというタイプのようであった。 「じゃあ、早速頼む」 「え?」  一瞬、何のことか分からなかったミオンが一度聞き返す。 「……そいつを使って、時空の狭間への道を開いてくれ。俺の方はいつでも構わない」 「何?もう……行くの?」  いきなりのクロスの提案に対し、ミオンの返しは少々歯切れが悪い。  同じタイプだとはいっても、この場でいきなりそれを実行して、敵地に乗り込んでやろうとする豪胆さは彼女には無かったようだ。  ミオンの場合は、もう少し準備やら心構えといったものが必要そうに見える。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加