湖に沈む僕の腕

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暫くして施設のスタッフ全員が、殺人、死体遺棄、おまけに虐待の容疑で逮捕された。 僕ら孤児は解放され、違う施設に移された。だけど、大人への不信感と恐怖は拭えるものではなかった。 風呂場の鏡に写る自分をじっ、と眺める。 片目は眼帯で覆われていて、長く邪魔な前髪で表情は見えない。前髪をあげてみた。 我ながら、表情の無い顔だと思った。 それで良い、それで良いんだ。誰にどう思われようと、僕には僕がいる。僕と同じ子が、僕の中にもう1人いる。 僕は孤独が愛おしい。 「髪の毛、切ろうかな」 僕自身に僕が、良く見えるように。 でもやっぱり、何をしても僕には届かない気がした。
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