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太陽の暖かな光がカーテンの隙間から空(ソラ)の顔を柔らかく照らす。
ゆっくり目を開らいたソラは、パイプベッドの上で上半身を起こした。
「ふぅぁぁぁぁあ……っ」トドの様な大きなアクビ声が、六畳ほどの部屋に響き渡る。
床に落ちていた、置き型のデジタル時計を拾い上げたソラは、目と心臓が同時に飛び出そうになった。
――「9:15」――
「ち、遅刻だぁぁぁっ」
慌てて飛び起きたが勢い余って照明に頭をぶつけた。
「痛ってぇぇぇっ」
ソラは五階建ての何処にでもある様な団地の三階で、父親と二人暮らしをしている。
慌てて部屋を飛び出したソラは、リビングの木製テーブルの上にある弁当箱を、おもむろに掴んだ。
弁当箱を包んでいるナプキンに父親からのメモが挟まれているのに気付いたソラは、恐らく手帳から切り離したと思われる、そのメモを抜き取った。
~今日の弁当はお前の大嫌いなシリーズで固めておいた!楽しんで噛み締めろ!偉大なる父より~
「うるせぇー、このクソおやじっ」
ソラは叫びながら弁当箱をカバンに詰め込み家を飛び出した。
ソラの父親は都内のビルの中で施設環境管理の仕事をしている。
仕事熱心で毎日泥まみれな作業着で疲れ果てて帰ってくるが、それでも、自分とソラの弁当は早起きしてでも毎日作り、ソラの分をリビングのテーブルの上に置いて会社に出勤する。
周りから見れば息子想いの良い父親だが、ソラからしてみればウザかった。
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