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泰子は下を向いたまま肩を落とし、揚子の言葉に答える様子はない。
垂れ下がった前髪が邪魔をして表情をうかがい知ることはできないが、良く見ると口元が小刻みに動いている。
「・・・するな。・・・もう・・・ない。」
揚子は、状況が理解できないまま聞きなおす。
「・・・えっ?」
すると、泰子は急に揚子の方を睨みつけるように顔を上げ、こう叫んだ。
「邪魔をするな!こいつはもう生きては帰さない!」
あまりの迫力に、思わず後ずさる揚子。
すると泰子の両手は鳥居の方へ向けられ、全身を使うかのような大きな動作を交えた後に揚子へと向けられた。
泰子の手が止まると同時に、大きな地響きが辺りを包み、三人の後ろにある鳥居がグラグラと揺れ始めた。
そして、その4~5メートルはあろうかという鳥居は、いとも簡単に根元から抜け、三人が立つ方向へと向かって倒れてきた。
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