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みどりは、今年の化学部の出し物に『呪い』を選ぼうと提案した。
呪いで虫、魚、鳥、ラットの体調を悪くしたり殺したり出来るのかを研究発表するのだという。
得体の知れない研究に戸惑う先輩部員であったが、みどりの言うことを聞かない訳にはいかないので嫌々ながらも了解した。
みどりはこれまでに呪いの方法を調査していて、既に虫、魚、鳥を呪い殺すことに成功していた。
そして今日、ラットを呪い殺すことに挑戦する予定である。
みどりの言うことには、哺乳類への呪いは虫や魚、鳥などに比べ難しいのだという。
みどりはラットの細胞を初めとする材料を調合し、呪いの儀式の準備を始めた。
みどりは全ての準備が整うと理科室のカーテンを閉め蝋燭に火を灯し、呪文を唱え始めた。
「南無、世羅迦苦耶儀。(なむ、よらかくやぎ)」
「キヌータ、ノー・リード。ミート・ネーツ、キー。イー、カ・アー!!」
しばらくの静寂の後、締め切った理科室の中に風が吹き始めた。
風は次第に強くなり、カーテンがなびき、蝋燭の炎が激しく揺れた。
みどりは無言のまま蝋燭越しにラットを見つめている。
先輩部員たちは、みどりの後ろでオロオロとしながら立ち尽くしている。
すると、ラットが苦しみ、もがき始めた。
固唾を飲み額に汗を浮かべながら食い入るように見つめるみどり。
次の瞬間、蝋燭の火がフッと消えた。
「何なの?!」
みどりの声が闇の中に響く。
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