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黒い影のように見えていたのは、長い髪の毛だった。
ボサボサの長い黒髪を肩下まで垂らした女が宙に浮かんでいる。
両手で1メートルはあろうかという大きな釘を持ち、納棺の時に着用する白装束を着ているのがはっきり見えているのだが、足元はぼやけている。
「ひっ・・・近づいてくる!」
恐怖におののく揚子だったが、今日子には何も見えていない様子で、不思議そうな顔をしている。
揚子は恐怖のあまり後ろに倒れこみ、ガラスの破片に手をついてしまったため、赤い鮮血が床に広がった。
倒れこんだ揚子の目前まで迫った白装束の女は、持っていた釘を揚子の首に向けると、こう呟いた。
「お前、見えているな。
せっかくあの女の体を頂こうとしているのに邪魔をするな!
お前は霊能力があるな。いい体だ。
気絶させてからお前の体を頂くとするか・・・。」
すると、釘を横にすると揚子の首に押し当てた。
「く、がっ・・・!ゲホッ!!」
首を押さえ苦しみだす揚子を見て、駆け寄る今日子。
「どうしたの揚ちゃん?!」
うつろな目で、右手を伸ばしながら答える揚子。
「お、女が!ゲホゲホッ!私、殺される・・・。ゴ、ゴホッ!」
ついに気を失ってしまった揚子。
「よ、揚ちゃんっ?揚ちゃん!!」
必死に叫びながら揚子の肩を揺らしていた今日子の頭が、ふと後ろへ仰け反った。
今日子はそのまま静かに目を閉じ、動かなくなった。
すると、今日子の目が再び開いた。
その目は、この前と同じく琥珀色へと変わっていた。
今日子の髪の毛がフワッと舞い上がったかと思うと、その漆黒の髪はみるみるうちに銀色へと変貌していった。
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