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「、きれい」
少女が呟いた。少年は「趣味が悪いな」と言って歩き始めた。ここにきて、2人の初めての会話だった。
◆
「……ここ?」
「うん」
少女が少年に問うて、少年は少女に答えた。
目的地の巌戸台分寮は、外観は古く、上品なホテルにも見える。初めて見た人は、ここが寮だとは思わないだろう。
“鍵は開いている”と言っていた。ノブを回すと、がちゃりと音をたてて、すんなり中に入れた。
「セキュリティ面にちょっと不満を感じる」
「……どうでもいい」
どうでもよくない、と少女が少年の頭を叩いた。少年はそれに慣れているのか、気にする素振りも見せず、辺りを見回す。
その瞬間、少年少女は激しい頭痛に襲われた。懐かしい何かが――頭の中に流れてくるような気もした。
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